第9回スモールトーク「空間実験 体験ツアー」
2011年3月19日(土)
大分県デザイン協会会員の塩塚隆生アトリエさんの2010年11月に移転したばかりの新社屋では、1F部分が8(はち)ギャラリーという名称で「空間実験」を不定期開催しています。2回目の「空間実験 case study 2 造形作家・有馬晋平 スギコダマ~五感を刺激する木の造形~ 」に会員希望者でおじゃましました。
通常は打ち合わせスペースとして使われている日常空間に、美術作品が期間限定とはいえ出現するという不思議な実験。作品鑑賞プラス塩塚隆生アトリエの新社屋も同時に見学させていただけるという1度で2度おいしい企画でした。
塩塚隆生アトリエの位置するところは、市街中心地にありながら路地をちょっと入った古い住居もある静かなところ。もともとその場にあった3F建てのビルをリノベーションした真っ白い箱のような建物です。その白さのイメージをさらに際だたせるのが建物内部の壁。内壁を剥ぎ取ったドリルの跡が残るマチエールを白く塗り、かまくらの雪壁のような質感になっています。白さが単調さではなく、馴染んだ柔らかさ、複雑さがあります。
道に面した1Fがショーウインドウのような大きなガラス窓になっており、屋外からも作品が見られます。ギャラリーで作品を鑑賞している人と空間を外から眺めると、ビルが額縁の役割になったひとつの大きな作品にも見えてきます。
今回作品を展示していた有馬晋平さんと塩塚隆生さんを囲んでギャラリートークの時間をいただき、興味津々の会員それぞれから質問が出てきて、塩塚さん、有馬さんはひとつひとつに丁寧にお答えいただきました。
有馬さんの作品は杉の木を磨いた無垢な地肌そのままの有機的な形。すべらかな表面の作品に触ったり座ったりことができるので、杉の香りにも包まれて心地よい癒し効果を感じました。見方によって美術、クラフト、家具…と移ろう作品を、どういう意識で作っているのかを聞いてみると、「カテゴリーはあまり意識していません。肩書きはあえて呼んでもらうなら『杉小玉をつくる人』で。」という真摯で新鮮な答えが返ってきました。手のひらに乗るひとつの細胞のような『杉小玉』が増殖していくイメージです。
塩塚さんから有馬さんの作品についてお聞きすると、「有馬さんの作品には木の本質を感じます」とのことでした。木を削り磨くことで本質が現れてくる形が、この空間の中でどう作用するのか。塩塚隆生アトリエのオフィスも削られて、もともとあった建物からその本質が現れ出たような印象があります。もともと壁で区切られていたところを、壁を壊してつなげることによって生まれる複雑な形は「わざわざつくろうと思うとぜったい作らない贅沢な形です。」とおっしゃっていました。この複雑さは、子どもの時みつけた自分だけの落ち着く空間が隠されているような心地良さです。
作ることは新しく生み出すだけではなく、既にあるものを発見していくことでもあるということを改めて感じた展覧会でした。
お伺いしたのが東日本大震災直後、事象のはかなさを目の当たりにし、現状にどう対処して良いのかわからないもどかしさなど、さまざまな思いを抱えながらふと立ち止まって考える静かなひとときとなりました。
ご協力いただいた塩塚隆生アトリエさん、有馬晋平さん本当にありがとうございました。
大分県デザイン協会会員の塩塚隆生アトリエさんの2010年11月に移転したばかりの新社屋では、1F部分が8(はち)ギャラリーという名称で「空間実験」を不定期開催しています。2回目の「空間実験 case study 2 造形作家・有馬晋平 スギコダマ~五感を刺激する木の造形~ 」に会員希望者でおじゃましました。
通常は打ち合わせスペースとして使われている日常空間に、美術作品が期間限定とはいえ出現するという不思議な実験。作品鑑賞プラス塩塚隆生アトリエの新社屋も同時に見学させていただけるという1度で2度おいしい企画でした。
塩塚隆生アトリエの位置するところは、市街中心地にありながら路地をちょっと入った古い住居もある静かなところ。もともとその場にあった3F建てのビルをリノベーションした真っ白い箱のような建物です。その白さのイメージをさらに際だたせるのが建物内部の壁。内壁を剥ぎ取ったドリルの跡が残るマチエールを白く塗り、かまくらの雪壁のような質感になっています。白さが単調さではなく、馴染んだ柔らかさ、複雑さがあります。
道に面した1Fがショーウインドウのような大きなガラス窓になっており、屋外からも作品が見られます。ギャラリーで作品を鑑賞している人と空間を外から眺めると、ビルが額縁の役割になったひとつの大きな作品にも見えてきます。
今回作品を展示していた有馬晋平さんと塩塚隆生さんを囲んでギャラリートークの時間をいただき、興味津々の会員それぞれから質問が出てきて、塩塚さん、有馬さんはひとつひとつに丁寧にお答えいただきました。
有馬さんの作品は杉の木を磨いた無垢な地肌そのままの有機的な形。すべらかな表面の作品に触ったり座ったりことができるので、杉の香りにも包まれて心地よい癒し効果を感じました。見方によって美術、クラフト、家具…と移ろう作品を、どういう意識で作っているのかを聞いてみると、「カテゴリーはあまり意識していません。肩書きはあえて呼んでもらうなら『杉小玉をつくる人』で。」という真摯で新鮮な答えが返ってきました。手のひらに乗るひとつの細胞のような『杉小玉』が増殖していくイメージです。
塩塚さんから有馬さんの作品についてお聞きすると、「有馬さんの作品には木の本質を感じます」とのことでした。木を削り磨くことで本質が現れてくる形が、この空間の中でどう作用するのか。塩塚隆生アトリエのオフィスも削られて、もともとあった建物からその本質が現れ出たような印象があります。もともと壁で区切られていたところを、壁を壊してつなげることによって生まれる複雑な形は「わざわざつくろうと思うとぜったい作らない贅沢な形です。」とおっしゃっていました。この複雑さは、子どもの時みつけた自分だけの落ち着く空間が隠されているような心地良さです。
作ることは新しく生み出すだけではなく、既にあるものを発見していくことでもあるということを改めて感じた展覧会でした。
お伺いしたのが東日本大震災直後、事象のはかなさを目の当たりにし、現状にどう対処して良いのかわからないもどかしさなど、さまざまな思いを抱えながらふと立ち止まって考える静かなひとときとなりました。
ご協力いただいた塩塚隆生アトリエさん、有馬晋平さん本当にありがとうございました。
文 / 写真 古庄優子