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第7回スモールトーク「デジタルポスターとその可能性」
平成21年10月20日
コンパルホール会議室において、「デジタルポスターとその可能性」をテーマに、(有)ライトアートの宮岡則雅さんによる『スモールトーク』が開催されました。
会場に持ち込まれた「デジタルポスター」は、32インチ液晶ディスプレイを90度回してスタンドに縦型に取り付けたもの。USBメモリから動画・静止画を取り込んで表示する仕組みで、最近耳にするようになったデジタルサイネージ(Digital Signage=電子看板)を手軽に実現しようという商品です。
http://www.samsung.com/jp/event/2008/harue_keiji/index.html
活用例は当日配布されたパンフレットにも上記サイトにも載っているのですが、さて数万円のホワイトボード+手描きPOP(あるいはプリント出力)に置き換えて20万のデジタルポスターを設置しようとする店舗などがどのくらいあるのか。もちろん、鮮やかな色彩や動画表示機能など従来の紙媒体では表現できない特色はあるのですが、電子機器なのでそのまま屋外には出せないし衝撃に弱いという面もあり、用途が限定されるかもしれません。
店舗であれば、店の外で客の呼び込みに使うより、入店した客への案内に適しているようです。そうであれば、単純な入り込み客の増加は期待できず、「入ってみたらいろいろ情報が提供される親切な店だった」という好感度アップを期待すべきでしょう。それが店への信頼となり、間接的に売り上げ増となることが期待されるわけですが、好感度とか間接的効果にコストを掛けられるか否かという点で、この「デジタルポスター」は使い手を選ぶように感じました。
もう一つ議論になったのは、デザイナーがどう関わるのか、という点です。
パソコンの操作に慣れていて多少のデザインセンスがあれば、表示する画像を自分で作ることが可能なので、そのような顧客にはハードウェアの販売だけで終わる場合もあり得ます。でもそれでは、デザイナーの本来の出番がありません。
定期的に内容を変更する必要があって、その画像を制作する仕事が生まれれば、デザイナーの活躍の場が広がりそうです。ただ、紙媒体のポスターやテレビCMの動画とは違って、まだデザイン料のモデルが確立しているとは言えず、画像制作がハードウェアのおまけ扱いされかねない危惧もあります。
ところで、最近は低価格化が後押ししてか、デジカメ写真を映し出す液晶の「フォトフレーム」が売れているそうです。私は、「こんな小さなディスプレイでは、あまり売れないだろう」と思っていたのですが、お気に入りの写真を身近に飾りたいというニーズは、確かにあったのだと思い知らされました。
「デジタルポスター」の将来性に不安がないわけではありませんが、情報をわかりやすく美しく示してほしいというニーズもまた、店舗や病院、公共施設などにたくさんあるはずで、いずれは怒濤のように普及していくかもしれません。
その時は、従来型の画像と文字のレイアウトだけでは足りず、効果的な動画の見せ方なども心得ておかないと、デザイナーになかなか仕事は回ってこないでしょう。私はとりあえず制作ソフトを試して、どんなことができるのか確かめておきたいと思っています。
文 久保木真人 写真 山本巌
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