平成15年度第4回研究会

日時:平成15年('03)12月01日(月)午後3時〜午後5時
■地域産業集積中小企業活性化事業研修会に参加
場所:大分県産業科学技術センター日田産業工芸試験所
講師:静岡文化芸術大学 教授 鴨志田厚子氏
テーマ:「ユニバーサルデザインによる商品開発」

12月01日(月)午後5時30分〜午後7時
場所:ID HOUSEにて第4回研究会を開催
会員:小野(幹事)・伊藤・谷・堀・穴井

以下に研修会・研究会の模様と各自のレポートを掲載しました。

2003
4th.Report

UD-REPORTS by
Universal Design
Study Group
in
Oita design Association


●日田産工試で行われた、鴨志田厚子氏の「ユニバーサルデザインによる商品開発」の研修会に5研究会員が参加。
●UDの定義、UDの背景、事例紹介とその解決事例、これからのUDへの取り組みや家具の事例を中心とした商品開発など、財団法人共用品推進機構の理事長でもある鴨志田氏の分かりやすいUDの講演は、大変有益であった。

●講演後、研究会員は日田のID HOUSEに会場を移し、ミーティングを行った。
特に、講演内容にもあった、家具類の事例や、TVデジタル化やWEBの視覚障害者に対する配慮などが話題となった。


TANI REPORT(谷まゆみ研究会員)

ユニバーサルデザインの講演を聞いての感想です。

実は、12/1に日田に行く前に午前中、別件で「人権を考える講演会」を聞く機会がありました。
講師は、大阪の方でカネボウ株式会社に勤務し「大阪同和・人権問題企業連絡会」理事長をされている人でした。テーマは「企業と人権」でした。

このところ、企業の社会的責任が大きくクローズアップされているようです。
実際、大企業がいろんな不祥事を起こし倒産にまで追い込まれているという現実を考えるとそれは当然の成りゆきかもしれません。最近は、黒川温泉の旅館が元ハンセン病の方の宿泊を拒否し組合から除名されたというニュースもありました。こんなことが大きく新聞に載ることによってその旅館や企業の信頼度は奈落の果てに落ちてしまいます。そこまで落ちてしまった信頼を回復するのは並み大抵のことではないということも企業は分かってきた訳です。それで企業の社会的責任(CSR)への取組みが始まりつつあると聞きました。カネボウのような連絡会を他の大手企業も着手しつつあるそうです。国際標準化機構(ISO)でも、人権に関する項目があり、企業を厳しくチェックしているそうです。
ただ、それが絵に描いた餅にならなければいいのですが・・・・・

たまたま同じ日に聞いた「人権」と「ユニバーサルデザイン」の話は無関係ではないような気がします。私達がデザインする場合、相手が人であるだけに考えや行動を無視してはデザインできない訳です。つまりユニバーサルデザインの背景にあるのは人権の尊重であり、個人の生き方の尊重ではないかと思うのです。(資料にも似たようなことを書いていましたが。)

日田での鴨志田さんの話の中でフィンランドのデザイナーにユニバーサルデザインの講演を頼んだら、そんな当たり前なことを何故わざわざテーマにするのかと言われたそうですが、彼らにとってみればユニバーサルデザインというのは、個々の生き方を尊重している中で自然に考え出されるものなのかもしれません。逆にそれを考えずにUDにとらわれていると売れるUD商品はできないということです。日本の企業も生き残りをかけてここにシフトして行こうとしていると言えるのではないでしょうか。
堅い話になりましたが・・・・・


HORI REPORT(堀理子研究会員)

私なりの感想を少しまとめてみます。

鴨志田厚子さんの講演の中で、印象に残ったことば・・
「さりげなく、使ってみて初めて良さが分かるものがホンモノ」

日本ではまだユニバーサルデザインの本来の意味を理解して使っているのだろうか?
私が、常々疑問に感じていたことでした。その答えがこれの様な気がしたのです。
難しいことではなく、さり気なく普段使えて便利でおしゃれで違和感のないモノ。
「さり気なさ」とは、きっと成熟した大人の粋。
UDの基本理念が本当の意味で国民の意識に根付き、自然に思考の中に組み込まれた時、初めてそれは「さり気なく」美しいデザイン性も兼ね備えた本当のユニバーサルデザインとして完成する。

静岡のワールドカップ会場のUDスタンダードの取組みも今後大分でも是非取り入れて欲しい取組みだと思いました。
スタジアムへのアクセス方法として、階段とゴム床の動く坂道スロープとケーブルの3点セット。
土木技術&経費的に見ても、従来のデザインよりも安価になるという言葉も見逃せないと思います。
これから造るモノなら尚更、計画する段階からUDの理念を取り入れ、当事者の立場に立った設計をする事が、結果として使いやすくしかも安く出来るのであればこれ程良いことはないはず。行政の方々に是非知って欲しい事例だと思います。

それと、もうひとつ、「フィッティングメンテナンス性」がこれからは重要なポイントになると思いました。
使い捨てでないデザイン。「古くて新しい職業」という言葉も印象に残りました。
アジャストメントの出来る技術者がこれからは大切。つまり、フィッティング技術が要求されるという事。
例えとして、自転車屋さんの話が出ました。
一つの商品を売るだけではなく、修理したり、組み上げたり出来るそして、その人に合った自転車を作り上げられる技術が自転車だけでなく、車椅子や色々な形へと繋がる可能性がある..と。これは全てのモノに当てはまる事だと思います。

今回は日田が講演会場という事もあり、木製品の紹介が主でしたが、その中で、幾つかとても皆さん興味を示された作品がありました。
「かに座」という座椅子と椅子の間の高齢者でも立ち座りが楽な様に・・と考えられたもの。
ネットで検索してみたら、長崎の無限工房が共同開発&制作していることが分かりました。

かに座の共同開発の会社*******
住所 〒854−0007 長崎県諫早市目代町705−16
販売元: 株式会社 無限工房
http://www.try-net.or.jp/~mugen-ko/
******************

ご存知の方もいらっしゃるかも?知れませんが、こちらでは、使いやすい食器など他にも色々な商品を開発制作しているようです。東京や大阪の都市部ではなく、長崎の諫早という地方で開発制作されているという事に、地方だから..と臆する事無く、やろうと思えば何処でだって出来ることはあるんだなと勇気づけられた
気がしました。(感想はここまで。)

諫早なら、近いので、来年UD研究会で、見学に行くのも良いな?
是非行きたいな・・と思ったりもしました。
なんか、視察とかばっかりですけど・・まずは知ることがUDの第一歩だから、いかがでしょう?
穴井さんがまとめてくださった、不便なもの一覧を元にして、一つずつ、再度検討してみるというのも面白いかも知れませんね。既に開発されているかどうかを調べてみるのも良いかも・・。

例えばですが、自転車だと、トライクという前輪が二輪の三輪自転車がとてもおしゃれでかつUDの理念にも沿った自転車かな?と思いましたのでご紹介。http://www.stems.jp/trike/index_3.html

私的には、電動自転車以来の画期的な自転車じゃないかな?などと思っています。
先日、亀川で初老の男性がこれの赤に軽やかに乗っていたのを目撃したのがきっかけでネットで検索して見つけました。なにより、カッコ良かったのが良い。しかも、乗り物として若者でも楽しめる要素があるというのがスゴイなとも思いました。
自分が乗り物好きなので・・・ついそっちに興味が行ってしまいがちですが・・。(^-^;>>

ANAI REPORT(穴井浩之研究会員)

今回、UDについて感じた事を、簡単ですがまとめてみます。

私も堀さんの意見に同感です。
「さりげなく、使ってみて初めて良さが分かるものがホンモノ」

この言葉に集約されてくるのではないか、と思います。難しく考える事ではなく、使う人の立場、気持ちになり、モノを創る、考える事が大切であると感じました。
そして、デザイナーは、表舞台(自己満足)に立つ事ではなく、裏方として足りない部分(未熟な社会環境)をサポート(意匠・啓蒙活動等)する事ではないかと思います。

また、UDの前提として、精神的な部分の優しさ、思いやりが必要であると思います。
ハサミ、カッター等を人に手渡すとき、持ち手を相手に向けて、手渡す事、本は表紙を相手に向けて手渡す事、お茶等の器は予め湯で温めておく、或いは冷やしておく・・・・・ごく当たり前の事ですが、ごく当たり前の事が出来ない社会環境が成熟しないと、UDは本当の意味(さりげない主張)で普及しないでしょう。
ちなみに今、私が通院しているところで頂く薬(カプセル)は、ホチッキスで止めています。(剥がすのが結構大変なのです(笑))

もうひとつ、気になる事ですが、将来的にある程度の規格化は重要だと感じますが、UDは受け手の価値観に左右されると思うので、ある程度自由性・融通性を持たせるべき、と感じました。
(お役所仕事にならないように)
すでに、お役所仕事で、CAD製図基準の煩雑さ(意味のない必要以上のレイヤー分け等)の事例がありますので。

日田での研修会、研究会、大変得るものが多かったです。伊藤さん、時間が許せば、ミニ遊船での研究会、楽しそうですね。




平成15年度(2003)
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